10月の中国では、社会に対する報復を目的と見られる重大事件が相次ぎ、恐怖が中国全土に広がっている

ボイス・オブ・アメリカの報道によると、多くのアナリスト達が経済の低迷により中国社会で、様々な挫折を経験した人々が急増していると考えるている。

こうした多くの人々が行動を起こし、無垢の人々を傷つける可能性が大きく高まっていることを意味している。

果して、中国当局(中共)には、これを抑え恐怖を和らげる力(ちから)があるのだろうか？


【報復型の事件発生】
中国では、社会に報復すると思われる重大事件が、急速に蔓延している

10月だけで少なくとも3件の中国メディアで報道された。

❶10月2日(水)、江西省景徳鎮市(こうせいしょうけいとくちんし＝中国東北部に*する地級市(古くから陶磁器の生産地として有名で、国家歴史文化名城に指定)で、交通事故が発生し、夫婦と一歳未満の子供(全て中国人)が死亡した。
加害者の父親は「やむを得ない事情があった」と主張し、車は五日前に買ったばかりで、息子の運転経験は一日半も経っていない」と説明していたが、加害者は危険運転致死傷罪の疑いで、逮捕されている。

❷10月8日(火)、広東省広州市(かんとうしょうこうしゅうし＝香港の北西部にあたる地珠江のほとりにあり広大な港湾都市で市内にはザハ・ハディドが設計した広州大劇院（広州オペラハウス）、箱形の広東省博物館、細い砂時計の形をした印象的な広州塔などの前衛的な建物が見られる)の小学校の校門前で一人の男が刃物を振り回し、小学生二人を含む三人(全て中国人)が負傷する事件が発生した。
現場近くの複数の保護者や周辺住民は、加害者はそれまでに中国当局の関係機関に、訴え出ていたと証言した。
広東省検察庁は、この事件が発生した現場の近くにあると言う。

❸10月23日(水)の夜、山東省青島市【さんとうしょうちんたおし＝中国東部にあり、高層ビル、公園、黄海に面するビーチを有する港湾都市、有名な青島(ちんたお)ビールは、ドイツ占領時代を起源とするビールで旧市街の中心部にはドイツ様式の建造物も残っている】で、コンクリートミキサー車が、複数の一般車両に次々と衝突する事件が発生した

地元警察によると、コンクリートミキサー車のドライバーは、酒気帯運転(日本では呼気1�gに付き0.15ミリグラム以上0.25ミリグラム未満のアルコール濃度が検出された場合、違反点が13点、処分は免許停止、免許停止期間は90日間として扱われる、そして0.25ミリグラム以上の呼気中アルコール濃度が認められた場合、違反点が25点で処分は免許取消、欠格期間は2年間とされている)の疑いがあり、この事故で３人が負傷し入院治療を受けている。

加害者のコンクリートミキサー車の運転手と思われる動画が、ソーシャルメディア上で拡散し、加害者が衝突事件の最中に「(中国)共産党が、俺を生かしておかない！」と繰り返し叫んでいる様子が動画に映っていた。

また、別の動画では目撃者が「コンクリートミキサー車が逆走しながら、50台以上の車に衝突した」と証言する声が動画で流れていた。

今年初めから、中国各地で社会に対する報復、あるいは報復と疑われる事件が、中国メディアの注目を集めている。

事件の主な形態としては、車での突進や刃物による襲撃など、中国の南部から北部まで、多くの省に渡り発生している。

加害者による無差別殺人は、特に小学生を含む社会的弱者層に対するもので、広く社会的パニックを引き起こしている。


【保護者達は、事件後も不安が続く】
広州市内に住む小学生の保護者二人は、ボイス・オブ・アメリカとのインタビューで、10月8日(火)の刃物による死傷事件にショックを受け、その後も不安な日々を過ごしていると語った。

広州市芳村区(こうしゅうしほうそんく)に住む保護者の一人は「学校は広州市の繁華街にあり、まさかこんな事件が起きるとは思わなかった。死傷事件から半月が経っても、まだ心配で子供の送り迎えにも、細心の注意を払っている」と述べていた。

広州市越秀区(こうしゅしえつしゅうく)にある中学校に通う子供の保護者は、ボイス・オブ・アメリカに対し「事件後は、越秀区の医療機関が充実しているので、万が一のことが有っても、子供がすぐに治療を受けられると自分に言い聞かせることもある」と述べている。

広がる不安の中、河南省(かなんしょう)某市の警察官は、ボイス・オブ・アメリカの取材に対し「中国社会では、多くの人々が様々なプレッシャーを抱え情緒が安定しない人が多く、それが悪質な事件を引き起こす要因になっている」と述べた。


【労働者層の「失墜」】
この社会への報復型事件の背景には、「五失人員(ごしつじんいん)」と呼ばれる人々が格別に注目されている。

いわゆる「五失人員(ごしつじんいん)」とは？

社会底辺に存在する貧困世帯を指す、中国当局(中共)が最近作った新しい造語であり、
❶投資の失敗
❷生活の挫折
❸人間関係の不和
❹心理的な不安定
❺精神的な異常
と言う五つの困難を抱える人々を指す。

中国民主建国会のメンバーである王少傑(ワン・シャオジェ)氏は、10月初めに書いた撰文(せんぶん＝文書作成)で、新型コロナウィルスのパンデミック後に中国各地で治安を脅かす事件が発生しており、その主な犯人はこの「五失人員(ごしつじんいん)層によって引き起こされている」と述べた。

王(ワン)氏は「中国経済の成長鈍化、貧富の格差拡大、社会の階層間移動の停滞などの要因が五失人員の人々に与える心理的負担を一層大きくしている。五失人員の人数は数億人に上り、事実的に全ての中国人が、五失人員の一員である可能性がある」と指摘した。

中国のアナリストによると、中国の労働者層は五失人員層の中でも、高い割合を占めており、社会への報復を目的とした事件に於いても、中心的な存在となっている。

アメリカのニューヨークを本拠地とする中国の労働権利団体「チャイナ・レイバー・ウォッチ(中国の労働環境改善に取組むNGO)」の創設者、李強(リー・チャン※中国の総理とは別人)氏は「中国経済の停滞により、労働者は職探しが困難で貯蓄もほとんど無い。このような状況では労働者層に最も大きな影響が及び、失意の労働者層が極端な行動を通じて社会に対する不満を表明する可能性が高まっている」と述べた。

湖北省(こほくしょう＝中国中央部の内陸地域で山々、湖、原生地域など多様な環境を有し省都の武漢は絵のように美しいと言われ東湖、五層の楼閣である黄鶴楼、大規模な湖北省博物館がある湖北省は長江クルーズで有名な三峡や巨大な三峡ダムでも知られてる)在住の龔平(ゴンペイ)氏は、ボイス・オブ・アメリカに対し「中国共産党(中共)には法治が無く、約束も守らず、信用も欠けているため、何が起こっても不思議ではない」と述べている。

龔(ゴン)氏によれば、警察関係者も彼の前で「重大事件を完全に防ぐことは不可能で、今後は我々の仕事が増え、益々難しくなるだろう」と繰り返し嘆いていたと言う。


【中国社会に対応策は有るのか？】
アメリカ、パシフィック・シンクタンクの主席研究員、陳冰(チェンビン)氏は、ボイス・オブ・アメリカの取材に対し「労働者層を含む『五失人員』が理性を失う要因には、頼るべき機関が無く、司法救済の道が閉ざされていることにある」と分析し「経済が悪化することで社会暴力問題が、浮き彫りになっている。中国当局は、多額の資金を投入して、社会保障を充実させるべきだ」と指摘している。

チャン・レーバー・ウォッチの李強(リー・チャン)氏は「悪質事件の発生を防ぐには、先ず中国当局が本気で、貧困対策に取り組み、各都市の地方政府が低所得者層を保護出来るようなシステムを確立し、この経済苦境を乗り越えられるようにすることが、解決の核心だと思う」と述べた。
李強(リー・チャン)氏は、また「中国が真の宗教の自由を必要としている」と主張した。
「共産主義を信じる人は、ほとんどおらず、中国共産党(中共)や習近平も、人々の心を慰めることは出来ない。宗教は人に安らぎをもたらす役割があり、民間の信仰を通じて、心の支えを提供出来るのだ」と述べた。

しかし、中国共産党(中共)は、このような悪質な出来事に対策を講じる時間が残されているのだろうか？

湖北省市民の龔平(ゴンペイ)氏は「中国共産党(中共)は既に、歴史の中のゴミ時間に入っており、全ての官僚や役人は躺平(タンピン＝2021年4月17日に中国インターネット掲示板「百度貼吧(バイデゥ)」に投稿された「寝そべりは正義だ」という文章がきっかけで広まった無気力を指す)し、中国共産党(中共)がどのように終焉(終焉)を迎えるかを見ているだけだ。いずれ崩壊する運命であり、誰もがそれを知っている」と述べた。