この報告書は、500頁以上にまとめられたアメリカ下院の報告書をサマリー版にまとめたものである。

この報告書について日本経済新聞の記事では、同報告書について、中国武漢のウィルス研究所からウィルスが流出した根拠として、ウィルスが自然界では見られない特性を持っていたことや、2019年秋に複数の研究所の職員が新型コロナに似たような症状が出ていたと考えられるとアメリカ国務省が指摘していたことなどを挙げた。
「自然界で発生したのであれば、既に証拠は表面化しているはずだ」とも指摘した。同特別小委員会は、下院で多数を占める共和党議員が委員長を務めており、民主党側が報告書の内容について批判している。民主党側は対抗する報告書で「ウィルスの起源や関連する知識を深められるような新たな情報は無かった」と反発した。
アメリカ政府内で、新型コロナの起源を巡る意見は分かれたままだ。
アメリカの疾病対策センター(CDC)や国立アレルギー感染症研究所(NIAID)は、動物を介して人間に感染した可能性が高いと見ているが、連邦捜査局(FBI)とエネルギー省は、武漢研究所から流出した可能性が高いと判断していると報じた。

この報告書は、新型コロナが中国研究所からの流出説を支持したアメリカ下院小委員会がまとめたもの。

新型コロナの起源を巡っては、アメリカ連邦機関、WHO(World Health Organization＝世界保健機関)、世界中の科学者達が様々な結論に達しており、いまだ合意に至っていない。

大方では、中国で動物から広がったと考えられるが、アメリカ情報機関は2023年、ヒトの感染例が最初に確認された中国武漢のウィルス研究所から、遺伝子操作されたウィルスが流出した可能性があると指摘した。

アメリカ下院の同小委員会は2年間にわたり、25回の会合、30回以上のインタビュー資料、100万ページ以上の文書検証を経て、520ページに及ぶ報告書をまとめ、中国武漢ウィルス研究所流出説を支持するに至った。

この報告書は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が、中国武漢ウィルス研究所の「機能獲得」研究に資金提供していたことが確認されたと指摘している。

調査には、アメリカ政府の新型コロナ対策を率いたアンソニー・ファウチ元主席医療顧問の非公開インタビューも含まれていた。

アンソニー・ファウチ氏は、2024年6月の委員会で、新型コロナの起源を隠ぺいしたことはないと否定し、中国武漢ウィルス研究所が扱っていたコウモリのコロナウィルスが、パンデミック(pandemic＝感染爆発) を引き起こしたウィルスに変異することは「分子レベルでは不可能」だと主張した。

だが、同報告書は新型コロナは「研究所の事故、または研究関連の事故によって出現した可能性が高い」と述べた。

【新型コロナウィルスの起源】
新型コロナウィルス(COVID-19)は、中国武漢のウィルス研究室から出た可能性が最も高い。

「研究室流出説(the "lab leak "theory)を支持する最も有力な議論は、下記の通りである。

❶このウィルスは、自然界では見つからない生物学的特性を有している。
❷データによれば、全ての新型コロナの感染例は、単一のルートで感染したことを示している。これは、複数回のスピルオーバー(異種間伝播＝いしゅかんでんぱとはその保有宿主からヒトに病原体が飛び移る瞬間、それを指す言葉である、人獣共通感染症、保有宿主、異種間伝播など)で感染した過去のパンデミックに反する。
❸武漢は、中国の新型肺炎に関する最も重要な研究室があり、そこでは不十分なバイオセーフティーレベル(BSL＝微生物や病原体の危険度に応じて分類したレベルで生物危険度レベルとも呼ばれる、微生物を取り扱う研究者による過失で管理区域外に漏れることを防ぐために、各国や各組織がリスク評価に従って分類している)で機能獲得(gain-of-function＝ある遺伝子の機能を調べる際にその遺伝子の機能や発現量を増強させることで機能を類推する実験手法を機能獲得実験という)研究を行ってきた歴史がある。
❹武漢ウィルス研究所の研究者は、2019年秋、新型コロナに似たウィルスに感染して病気になった。それは、華南海鮮市場で新型コロナウィルスが発見される数ヶ月前のことである。
❺科学的に判断すれば、仮に自然発生の証拠があるなら、既に表面化しているだろう。

「新型コロナウィルスの近位起源(The Proximal Origin of SARS-Cov-2)の発表

「新型コロナウィルスの近位起源(The Proximal Origin of SARS-Cov-2)の発表され、公衆衛生当局者やメディアによって、研究所流出説の信頼性を損なうために使われた。

この発表は、ファウチ博士が新型コロナウィルスは、自然界が起源という自分にとって好ましい説を促進するために促したものだ。


機能獲得(gain-of-function)研究

機能獲得研究に関連して研究所で起きた事件が、新型コロナウィルスの起源である可能性が最も高い。

危険な機能獲得研究を監視するための現行の中国政府のメカニズムは、不完全であり、ひどく入り組んでおり、グローバルな適応性に欠けている。


エコヘルス・アライアンス(EcoHealth Alliance＝米国に本拠を置く非政府組織で、人、動物、環境を新興感染症から守るという使命を掲げている。この非営利団体は、世界中のパンデミックの防止とホットスポット地域の保全促進を目的とした研究に重点を置く)(エコヘルス)

ピーター・ダザック博士率いるエコヘルスは、中国武漢で危険な機能獲得研究を行うためにアメリカの納税者の金を使った。

本特別小委員会が、エコヘルスが国立衛生研究所(NIH)の助成金の条項に違反した証拠を公表すると、保健福祉省は、公式な禁止手続きを開始し、エコヘルスへの助成金を全て停止した。

新たな証拠によれば、司法省は、エコヘルスのパンデミック期の活動について調査を始めた。


国立衛生研究所の失策

国立衛生研究所(NIH)の危険な研究への助成と監督の手続きには欠陥があり、信頼性を欠き、公衆衛生と国家安全にとって深刻な脅威である。

同研究所は、デビット・モレンス氏と「情報自由法の女性(FOIA Lady)」マージ・ムーア氏の動向に見られるような連邦の記録保持に関する法律を回避することを促すような環境を育成した。


過去2年間で、特別小委員会の民主党議員は以下のことが分かった。

特別小委員会の共和党議員による「新型コロナの起源」調査は、そのウィルスの起源を見つけられず、新型コロナの発症プロセスに関する理解を深めることも出来ていない。

ファウチ博士は、研究室流出説を弾圧するキャンペーンを組織していない。

彼は、「新型コロナウィルスの近位起源(The Proximal Origin of SARS-Cov-2)の論文を指揮しなかったし、論文の著者達を買収するために助成金を与えたりしなかった。

彼は、国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のスタッフに、この問題のメディア報道を操作するよう指示していない。

エコヘルス・アライアンス(EHA)は、新型コロナウィルスを作ってパンデミックを引き起こすことなどしていない。

助成金と中国武漢ウィルス研究所への助成金再配分によって研究されたウィルスは、新型コロナウィルスと遺伝子がかけ離れているのでパンデミックを起こし得ない。

同様にファウチ博士は新型コロナウィルスを作っていない。

国立アレルギー・感染研究所(NIAID)の助成金で研究されたウィルスが新型コロナのパンデミックを引き起こしたことを示す証拠はない。

ファウチ博士が、コロナのアウトブレイク以前に、エコヘルス・アライアンス(EHA)への助成金に気づいていたことを示す証拠もない。

ファウチ博士は、中国武漢ウィルス研究所における機能獲得研究に関して議会に嘘を言ってはいない。

彼の上院における証言は、機能獲得という言葉の通常の定義に言及したものであり、非公式の言葉の使われ方に言及したものではない。

その点において、彼の証言は正確である。

エコヘルス・アライアンス会長のダザック博士とエコヘルス・アライアンスは、彼らの活動について連邦政府を誤導し、疑わしい他の行為にも関与した。

３年前の中国武漢発、新型コロナウィルスについてアメリカ下院の最終報告書そのに続く